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OCNCキックオフシンポジウムを開催しました

2025年11月4日、大阪市のコングレスクエア グラングリーン大阪にて、大阪大学カーボンニュートラル連携機構(OCNC)キックオフシンポジウムを開催いたしました。学内だけでなく学外からも多くの方にお集まりいただき、170名の方々にご参加いただきました。 

シンポジウムは、熊ノ郷 淳総長の開会あいさつから始まりました。

大阪大学が「適塾」を源流として、これまでも地域と共に多様な社会課題の解決に努めてきたこと、カーボンニュートラルの実現に向けて、本機構がその中心的な役割を担う拠点として、さらに大きなイノベーションの創出をめざすとの説明がありました。

続いて、経済産業省 GXグループ環境政策課 池園 京佳 課長補佐による、基調講演「グリーントランスフォーメーション政策の動向について」が行われ、日本政府のグリーントランスフォーメーション政策の現状について説明されました。 

 

その後、下田吉之機構長が、OCNC設立の経緯、特色、そして今後の目標について説明しました。大阪大学の特色は活発な産学連携を通じた問題解決機能(社会実装能力)の高さであり,大阪大学の強みを生かした6つのグループ分けにより,気候変動問題に対応する学際組織を形成したと説明し、48名の機構メンバーを紹介しました。 

続いて、各グループのリーダーが各研究グループの研究内容を紹介しました。 

まず、エネルギーマネジメントデバイスグループから中西周次教授が「CN実現に資するエネルギー変換材料・デバイス・システム」について講演を行いました。 

カーボンニュートラルとエネルギ―変換は切っても切れない関係にあると述べ、人工光合成、次世代蓄電池、半導体デバイスなどに関する各研究グループの取り組みについて紹介しました。最後に、電気-化学エネルギー変換(物質変換)を基軸とした中西研究室の取り組みの一例として、バイオマス生産技術に関する電気化学アプローチについて説明しました。

次に、バイオものづくりと食グループでは、本田グループリーダーの代理として松田 史生教授が、「バイオものづくりと食で取り組むカーボンニュートラルへの取り組み 」について講演を行いました。

バイオものづくり技術は、脱炭素社会の実現にむけて大きな役割を担うことが期待されており、大阪大学が日本のバイオテクノロジー発展の中心的存在であることや、情報科学研究科バイオ情報工学専攻について説明しました。また、産業生物化学工学、3Dバイオプリント発酵食品、バイオコンバージョン技術、バイオガスなど、各研究グループの研究内容に加え、出芽酵母やがん細胞の代謝を計測し、有用な知見の獲得を目指す松田研究室の研究についても紹介しました。 

エネルギー供給グループの重森啓介教授は、「レーザーフュージョンエネルギー開発 」について講演を行いました。 

カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーのさらなる普及だけでなく新たなエネルギー供給技術の確立が急務であると述べました。そして、太陽電池開発、赤外線のエネルギー資源化、水素・アンモニアの直接燃焼利用、レーザーフュージョンエネルギーなど、各研究グループの研究内容を紹介しました。また、レーザー科学研究所の施設紹介や重森研究室が取り組むレーザーフュージョンエネルギー実現を目指したレーザー核融合研究についても説明しました。 

その後、50分間のポスター発表を行いました。ポスター発表会場では、機構員35名がポスター発表を行い、参加者の方々と積極的に議論、交流を重ね、会場は終始和やかで活気のある場となりました。 

ポスター発表後は、カーボンニュートラルを実現する社会システムグループの原 圭史郎教授による「気候変動の緩和・適応策とフューチャー・デザインの実践」についての講演から始まりました。 

経済学研究科、法学研究科、人間科学研究科といった、様々な分野に所属するグループメンバーを紹介しました。続いてフューチャー・デザインの概念について説明し、その中でも有望な仕組みの一つとして「仮想将来世代」を取り上げました。京都市や水戸市では、この手法により新たな施策提案や職員の意識変化が見られ、包摂的・横断的な政策形成への効果が示されていることを紹介しました。近年では、産学官連携により、カーボンニュートラル対策を検討するフューチャー・デザインの実践も始まっており、この仕組みを取り入れることで、新たなイノベーションの方向性をデザインすることが可能となっていると説明しました。  

続いて、スマートシティグループの下田吉之教授が「DXが導くくらしのGX 」について講演を行いました。 

脱炭素社会の実現に向けて、都市として今取り組むべき研究テーマとして、情報化されたWell-Being の高いカーボンニュートラル都市の創成や、ZEB・ZEH、太陽光発電、電気自動車が大量普及した都市のエネルギーネットワークシステムの構築を挙げました。さらに、Well-Beingの向上に資するエネルギーサービスの実現が重要であると述べ、統合都市分析、デジタルツイン、エネルギーマネジメントなどの各研究グループの研究内容や研究連携の体制についても説明しました。また、箕面キャンパスでの実証実験や学内連絡バスの電気バス実験など、これまでに推進してきた研究実績を紹介しました。 

スマートマニュファクチャリンググループからは、中野 貴由教授が「~3Dプリンティングによる環境調和型ものづくりを中心に~ 」について講演を行いました。

スマートマニュファクチャリングとは、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー(資源循環)を掛け合わせてスマートなモノづくり・モノづくりプロセスを実現しようとする取り組みであると述べ、積層造形(3Dプリンティング)、触媒関連研究、ライフサイクルアセスメント研究など、各グループのメンバーとその研究内容を紹介しました。さらに、カーボンニュートラル推進において重要な新プロセスである3Dプリンティングのグリーンな特徴として、レーザビーム積層造形(3DP)の実例を紹介し、材質制御が可能である例として部位依存型強度特性を発揮する高生体親和性人工関節を取り上げて説明しました。社会実装の例として、椎体の骨配向誘導型スペーサーの設計について解説しました。  

最後に、尾上 孝雄理事・副学長が閉会あいさつを行いました。

本機構は、大阪大学らしさを生かし、総合知と実践力の創出、そして研究者間の連携を目的として設立した機構であるとの説明があり、学内外との連携を通じて社会に貢献する組織として発展していくことを祈念し、閉会のあいさつを締めくくりました

このようにしてシンポジウムは盛況のうちに終了いたしました。 

本シンポジウムは、 OCNC が、カーボンニュートラル社会の実現に向けて研究・教育・社会実装を一体的に推進する学際的拠点として果たす役割を広く発信する場となり、学外機関との連携を深め、研究成果の社会実装や情報発信を推進するための、大変有意義な時間となりました。 

お忙しいところシンポジウムにご参加いただいた皆様、長時間にわたりお付き合いいただき、誠にありがとうございました。今後ともOCNCへのご支援、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。